大阪高等裁判所 昭和60年(行コ)45号 判決 1986年7月31日
京都市上京区下立売通黒門西入橋西二丁目六三三番地
控訴人
林孝一
右訴訟代理人弁護士
高田良爾
京都市上京区一条西洞院東入元信如堂町三五八
被控訴人
上京税務署長
横田光夫
右指定代理人
佐山雅彦
同
杉山幸雄
同
藤川昌保
同
中村嘉造
主文
本件控訴を棄却する。
(控訴人の当審における請求拡張につき)
被控訴人が昭和五七年三月二日付けでした控訴人の昭和五三年分所得税に係る過少申告加算税賦課決定のうち、所得金額を三一五万一五六〇円として計算した額を超える部分を取り消す。
控訴人の当審におけるその余の請求を棄却する。
控訴人費用(当審における請求拡張の分を含む。)は控訴人の負担とする。
事実
一 当事者の求めた裁判
1 控訴人
原判決を次のとおり変更する。
被控訴人が昭和五七年三月二日付けで控訴人に対してした控訴人の昭和五三年分ないし昭和五五年分の所得税更正決定のうち、昭和五三年分の総所得金額が二〇二万七九七七円、昭和五四年分の総所得金額が一九二万一一四九円、昭和五五年分の総所得金額が一四七万四〇〇〇円をそれぞれ超える部分及びこれに対応する昭和五三年分、昭和五五年分の過少申告加算税賦課決定をいずれも取り消す(ただし、過少申告加算税賦課決定の取消しを求める部分は当審で拡張した請求)。
訴訟費用は第一、第二審とも被訴訟人の負担とする。
2 被控訴人
主文一項と同旨
二 当事者の主張
当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決事実摘示と同一であるから、それをここに引用する。
1 原判決三枚目表一行目の「過少申告加算税付加決定処分」の次に「(以下「本件各処分」という。)」を加え、三枚目表五行目及び同三枚目裏一行目の「本件処分」をそれぞれ「本件各処分」と改め、同三枚目裏二行目の「超える部分」の次に「及びこれに対する昭和五三年分、昭和五五年分の過少申告加算税付加決定」を加え、同八枚目裏三行目の「それを」を「右各同業者の売上金額、売上原価、一般経費等を」と改める。
2 同一一枚目表三行目の「原告の取扱商品は引箔用の塗料である」を「控訴人は皮革用ラツカー等を引箔用としてのみ販売している」と、六行目の「あるなど、取扱商品を異にする」を「あり、控訴人とはその販売目的及び取扱商品を異にしている」、と一〇行目から末行にかけての「販売ルートを異にするのである」を「控訴人とその取引形態を異にするもので、その原価率も控訴人のそれよりも低く、利益率が高いことは明らかである」と、同一一枚目裏一行目の販売形態が異る」を「その販売及び営業形態を異にする」と各改め、七行目の末尾に続けて「また、控訴人は箔及びその材料のほかに引箔用の紙も取り扱つており、被控訴人主張の同業者とはその取扱商品を異にするものである。したがつて、右同業者は控訴人と類似性がない。」を加える。
3 同一二枚目表四行目の末尾に続けて「給与の支払を裏付ける領収書や伝票は存在しないし、その記帳もない、昭和五五年分よりも少ない売上げしかあげていない昭和五三年及び昭和五四年に雇人がいたとは考えられない。」を、同一二枚目裏二行目の末尾に続けて「また、売上先の仕様目的によつて塗料の価格が変わるものでもない。」を五行目の末尾に続けて「なお、控訴人は引箔用の紙も取り扱つており、被控訴人主張の同業者とはその取扱商品を異にするものであつて類似性がない旨主張するが、箔材料には引箔用の紙や着色用の染料着剤(カゼイン)等をも含まれると考えられるから、控訴人は右同業者とその取扱商品を異にするものではない。」を、同一三枚目裏一行目の末尾に続けて「なお、控訴人は、同業者Bの原価率は控訴人のそれよりも低く利益率が高い旨主張するが、右同業者の原価率及び所得率は、原判決添附別紙4「本件係争年分の塗料の同業者率の算定について」の売上原価率及び算出所得率欄記載のとおり、他の同業者のそれと比べても特段の差異は認められない。」をそれぞれ加える。
三 証拠関係
当事者双方の証拠は、原審訴訟記録中の書証目録及び証人等目録と当審訴訟記録中の証人等目録に記載のとおりであるから、それをここに引用する。
理由
一 当裁判所も当審における請求拡張前の控訴人の本訴請求は原判決が認容した限度において正当であると判断するものであつて、その理由は、次のとおり付加、訂正、削除するほか、原判決理由説示と同一であるから、それをここに引用する。
1 原判決一四枚目表二行目の「証人間瀬茂の証言」の次に「及び弁論の全趣旨」を、一〇行目の「打ち切つたこと、」の次に「そして被控訴人は、控訴人の取引先等の反面調査を行い、その結果に基づき控訴人の本件係争年分の所得金額を推計し、本件各処分をしたこと、」を、同一四枚目裏四行目の「いうべきところ、」の次に「右1認定の事実関係のもとにおいては、被控訴人の部下職員」をそれぞれ加え、六行目の「について、その」を「は一応合理的であると認められ、」と、七行目の「が認められる証拠がない」を「を認めるに足りる証拠はない。」と各改め、同行の「本件では」から八行目末尾までを削る。
2 同一五枚目表五行目の「そうすると、」の次に「控訴人の本件係争年分の期首及び期末の各棚卸額を確定するに足りる証拠がない本件においては、控訴人の本件係争年分の期首及び期末の各棚卸額はいずれも同額であると推定し、右認定の本件係争年分の各仕入金額をもつて本件係争年分の各売上原価とするのが相当であり、したがつて、」を加え、一〇行目から末行にかけての「乙第二ないし第四号証の各一、二」を「乙第三、第四、第六、第八号証の各一、二」と改め、同一五枚目裏二行目の「被告主張」の次に「(本件処分の適法性について)3の(一)の(1)」を加え、三行目から四行目にかけての「を整理して記載したのが別紙4である」を「の本件係争年分の売上金額、売上原価、一般経費及び算出所得金額は原判決添附の別紙4「本件係争年分の塗料の同業者率の算定について」の1売上金額、2売上原価、4一般経費、5算出所得金額記載のとおりであり、その売上原価率及び算出所得率は同4の3売上原価率及び6算出所得率欄記載の各数値となる」と、同一六枚目裏ハ行目の「別紙4の記載」を「前記認定事実」と各改め、同一七枚目表五行目の「9の<3>の」、八行目の「9の<1>の」、同一七枚目裏六行目の「9の<4>の」の次にそれぞれ「塗料欄記載の」を加える。
3 同一八枚目裏二行目の「仕入金額を、」の次に「前記三の1の(一)において説示したのと同様の理由で」を、三行目の「9の<2>の」の次に「箔・箔材料欄記載の」を、九行目の「被告主張」の次に「(本件処分の適法性について)3の(一)の(2)」をそれぞれ加え、一〇行目から末行にかけての「を整理して記載したのが別紙5である」を「の本件係争年分の売上金額、売上原価、一般経費及び算出所得金額は原判決添附の別紙5「本件係争年分の箔の同業者率の算定について」の1売上金額、2売上原価、4一般経費、5算出所得金額欄記載のとおりであり、その売上原価率及び算出所得率は同5の3売上原価率及び6算出所得率欄記載の各数値となる」と改め、同一九枚目表二行目の「これらの同業者は」の前に「右認定事実によると、」を加え、七行目の次に改行の上次のとおり加える。
「なお、控訴人は、被控訴人が選定した同業者は取扱商品や販売及び営業形態を異にするもので類似性がないとして、推計方法の非合理性を主張するが、同業者間に通常存在する程度の営業条件の差異は、平均値の中に吸収、捨象されたものとして無視することもやむを得ないといわざるを得ず、それが該平均値による推計を根本的に不当ならしめるほどに顕著なものでない限り、これを斟酌するを要しないと解するのが相当であるところ、原審(第一、二回)及び当審における控訴人本人尋問の結果によつても右顕著な不当性を認めるに足らず、ほかにこれを認めるに足る証拠はない。」
4 同一九枚目表九行目の「9の<3>の」、同一九枚目裏一行目の「9の<1>の」、五行目から六行目にかけての「9の<5>の」、九行目の「9の<4>の」の次にそれぞれ「箔・箔材料記載の」を加え、同二〇枚目の表三行目の「9の<4>の」の次に「合計欄記載の」を加える。
5 同二〇枚目裏一行目の「原告は」から七行目の「原告主張のとおり、」までを「原審(第一回)及び当審における控訴人本人尋問の結果によれば、控訴人は本件事業に関して小野勉に対し、昭和五三年分として金一八〇万円、昭和五四年分として金一二〇万円をそれぞれ給料として支払つたことが認められ、成立について争いのない乙第三一号証の一、二によつても右認定を左右するに足りず、ほかに右認定を覆するに足る証拠はない。よつて、」と、七行目の「として」を「は」と各改め、一〇行目の「事業専従者」の前に「原判決添付の別紙2の「本件係争年分の事業所得金額の計算」の<7>欄記載の」を加える。
二 以上によれば本件各処分のうち、昭和五三年分の所得税更正決定については総所得金額三一五万一五六〇円を超える部分、昭和五四年分の所得税更正決定については総所得金額二三三万二二〇五円を超える部分はいずれも控訴人の所得を過大に認定したものであるから、違法であり、また、昭和五三年分所得税に係る過少申告加算税付加決定のうち、所得金額を三一五万一五六〇円として計算した額を超える部分は違法というべきである。
三 してみると、当審における請求拡張前の控訴人の本訴請求を右の限度で認容した原判決は相当であつて、本控訴は理由がない。そして、控訴人が当審において追加した過少申告加算税賦課決定取消し請求は、認定の右限度において理由があるが、その余は失当である
よつて、控訴人の本件控訴を棄却し、控訴人が当審において追加した過少申告加算税賦課決定取消請求を右の限度で認容し、その余を棄却することとし、控訴費用(当審における請求拡張の分を含む。)の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条、九二条ただし書を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 日野原昌 裁判官 坂上弘 裁判官 大谷種臣)